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南海トラフの津波は泉南市にいつ、どこまで来るか

2026-10-20防災

南海トラフ巨大地震が起きたとき、泉南市の海岸には地震から何分で、どれくらいの高さの津波が来るのか。どこが水につかり、どこへ逃げればよいのか。この記事では、大阪府の「津波浸水想定」(どこがどれくらいの深さまで水につかるかを計算した図と数字)と、泉南市の津波避難計画やハザードマップを並べて読みます。府は2026年3月31日に、2013年以来となる新しい想定を公表しました。一方、市のハザードマップや市のウェブサイトの数字は、2013年の想定にもとづいたままです。数字が二通りあると知っておけば、市と府の資料を見比べるときに迷わずにすみます。

2013年の想定:最大3.2メートル、75分

大阪府は2013年8月、内閣府が示した南海トラフ巨大地震のモデルから府に最も大きな影響を与える4つのケースを選び、水門が閉まらない場合など悪い条件を重ねて津波を計算しました。泉南市の結果は、浸水面積110ヘクタール、最大津波水位は海抜3.2メートル(東京湾の平均海面からの高さ。以下同じ)、1メートルの津波が来るまで地震から75分でした。 泉南市はこの想定をもとに、津波ハザードマップと津波避難計画(2020年3月改訂)をつくっています。市のページによると、水につかる想定なのは岡田地区、男里浜地区、りんくう南浜の一部です。避難計画には、府の想定で市内の揺れは最大震度6強とあります。

2026年の新しい想定で変わったこと

府は、前回から約10年がたち、地形のデータが細かくなったことや防潮堤の耐震化が進んだことなどを理由に、想定を見直しました。新しい解説資料では、泉南市の浸水面積は39ヘクタール(前回110)、最大津波水位は3.5メートル(前回3.2)、1メートルの津波が来るまでの最短時間は76分(前回75)です。海面が20センチ上下し始めるまでの時間は30分(前回29)とされました。 市内の代表地点の最大津波水位は、岡田漁港の港口で2.8メートル(前回2.5)、関空Ⅱ期南で2.5メートル(前回2.6)です。浸水する面積は小さくなり、海岸での水位は少し高くなりました。 新しい想定は、南海トラフとは別に、大阪湾の海底にある断層(大阪湾断層帯)が動いた場合の津波も計算しています。府の図では、岡田漁港の港口で海面が20センチ動くまで14分、1メートルに達するまで23分です。ただし府は、この地震で南海トラフより浸水が広がるのは関西空港だけだとしています。

「到達時間」は二通りある

府は、到達時間に二つの考え方があることに注意を促しています。市町村のハザードマップに書かれることが多いのは「1メートルの津波が来る時間」です。これに対し、地震のあと気象庁が発表する津波到達予想時刻は「潮位が変わり始める時間」です。泉南市の75分(新想定では76分)は前者で、海面が動き始めるのは約30分後です。府の資料は、20センチより小さな変化でも流れが速く危ない場合があるとも書いています。 府の解説には、ほかにも読み落とせない注意書きがあります。色の塗られていない場所が安全とは限らないこと、津波はくり返し来て第2波以降が大きくなることもあること、想定より大きな津波が起きる可能性もあることです。

市の避難の考え方:南海本線を越えて山側へ

泉南市の津波避難計画は、南海本線より海側を「津波避難対象地域」としています。岡田1丁目(一部)と5〜7丁目、樽井4〜7丁目(一部)、男里と男里6、7丁目、りんくう南浜です。一部しか水につからない地区でも、想定を超える地震がありうるとして、地区全体を指定しました。 逃げる目標は、まず府道堺阪南線(旧国道26号)、次に南海本線より山側の避難所です。計画は、歩くのが難しい人の速さを秒速0.368メートルと置き、準備の5分を除いた70分で歩ける距離を約1,500メートルと計算しました。そのうえで、津波が来るまでに南海本線の山側へ逃げられない「避難困難地域」はないと判断しています。避難は原則として徒歩です。車は渋滞や事故を起こし、歩いて逃げる人の妨げになるおそれがあるからです。 間に合わない人のために、市は民間の建物などと協定を結び「津波避難ビル」を指定しています。2024年6月24日現在の一覧には12施設があり、大阪府済生会泉南医療福祉センター(約2,680人)やイオンモールりんくう泉南(約2,500人)などが入っています。ただし、西信達小学校のように夜間や休日に使えない施設もあり、食料の備えはありません。

議会で出た論点

市議会では津波避難タワーが取り上げられてきました。令和6年第3回定例会では、花火大会などで人が集まったときの避難について古谷公俊議員が質問し、川端行政経営部長が、到達まで75分あり南海本線から最も遠い場所からでも時間内に避難できると考えている、タワーは相当な費用がかかり現時点で建設計画はない、と答えました。令和8年第2回定例会では、古谷議員が、泉佐野市が補正予算で津波避難タワーの費用1,400万円を計上したと紹介して設置を求めました。川端部長は、イオンモールを新たに避難先に加えたと説明し、タワーは検討の材料にすると答えています。

国の試算が示す早い避難の効果

内閣府が2025年3月に公表した新しい被害想定では、南海トラフ巨大地震による死者は全国で最大約29.8万人です。同じ資料は、早く逃げる意識が低い場合に約21.5万人とされる津波の死者が、全員が地震から10分以内に避難を始めれば約7.3万人まで、約7割減るという試算も示しています。

考えるための問い

- 自宅や職場、よく行く場所は南海本線より海側にありますか。そこから府道堺阪南線まで、歩いて何分かかるか確かめたことはありますか。 - 夜中や休日に地震が起きたとき、近くの津波避難ビルは使えますか。使えないなら、どこへ向かいますか。 - 市のハザードマップは2013年の想定にもとづいています。府の新しい想定を、市はいつ、どのように地図や計画に反映させるのがよいと思いますか。

出典

- 津波浸水想定(令和8年3月31日公表)(大阪府・2026年) https://www.pref.osaka.lg.jp/o020080/tu.html - 津波浸水想定について(解説)令和8年3月31日公表(大阪府・2026年) https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/128321/tunamisinsuisouteikaisetushuusei2.pdf - 津波浸水想定について(解説)平成25年8月20日公表(大阪府・2013年) https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/85018/03_kaisetsu.pdf - 津波ハザードマップ・津波避難計画(泉南市) https://www.city.sennan.lg.jp/kakuka/gyouseikeiei/kikikanrika/kikikanrikakari/bosaikikikanri/hazard_map/1455072665141.html - 泉南市津波避難計画 令和2年3月改訂(泉南市・2020年) https://www.city.sennan.lg.jp/material/files/group/5/R01tunamihinan.pdf - 総合防災マップ(泉南市・2022年作成) https://www.city.sennan.lg.jp/kakuka/gyouseikeiei/kikikanrika/kikikanrikakari/bosaikikikanri/hazard_map/1496624389054.html - 津波避難ビル(津波時一時避難施設)(泉南市・2024年6月24日現在) https://www.city.sennan.lg.jp/kakuka/gyouseikeiei/kikikanrika/kikikanrikakari/bosaikikikanri/hinanbasho/tsunami/1455072649460.html - 令和6年第3回定例会(第1号)会議録(泉南市議会・2024年) https://the-sennan.top/yobo/100940 - 令和8年第2回定例会(第2号)会議録(泉南市議会・2026年) https://the-sennan.top/yobo/106026 - 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書概要(内閣府・2025年) https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg_02/pdf/nankai_gaiyo.pdf